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負けても続投”の日本政治:誰のための政権なのか

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こんなに苦しいのに、なぜ内閣は総辞職しないのか

――選挙が示した民意と、止まったままの政治のギャップ

2025年7月20日の参議院選挙で与党は大敗し、連立は参院での多数を失いました。

それでも内閣は総辞職せず、「続投」を選んでいます。

世論は二分しつつも、「選挙で示された民意をどう受け止めるのか」

という根本の問いが置き去りにされています。

実際、報道各社は「敗北後も続投の方針」を一貫して伝え、

与党内からも退陣要求が出る一方で、内閣は踏みとどまっています。

ReutersJapan Wire by KYODO NEWSフランス24Prime Minister’s Office of Japan

データで見る「暮らしの苦しさ」

「国民生活は持ちこたえている」という楽観論に対して、家計の現実は厳しいままです。

  • 実質賃金は2025年6月時点で6か月連続マイナス。賃上げが続いても、物価上昇に追いついていません。Reuters
  • 食品価格は前年比で高止まりし、家計の“痛点”に。2025年7月の食料インフレは前年同月比で大幅上昇を維持しています。トレーディングエコノミクス
  • 4〜5月の家計消費は弱含み。4月の実質消費は前年同月比で予想外のマイナス、月次でも落ち込みました。Reuters
  • OECDの整理でも、2021年初から2025年初にかけて実質賃金は累計で下落し、インフレが家計の実質所得を圧迫してきたことが示されています。OECD

これらは「体感」と一致します。

スーパーの合計金額は増えるのに、かごの中身は減る。

光熱費の固定費が重く、娯楽や教育費を削る。

――そんな“見えない増税”が日常になっているのです。

それでも総辞職が起きない「法」と「政治」の理由

  • 憲法上の仕組み:内閣の総辞職が義務づけられるのは、衆議院で内閣不信任決議が可決されたのに10日以内に解散しない場合などに限られます(憲法69条)。参議院選の敗北だけでは自動的に総辞職にはなりません。Prime Minister’s Office of Japan
  • “参院敗北=直ちに退陣”ではない慣行:日本の議院内閣制では衆議院が内閣の信任基盤。上院(参院)での敗北は政権運営を難しくしますが、法的義務ではなく政治判断の領域です。実際、今回も敗北後に辞任観測が流れたものの、首相は否定し続投を明言しました。フランス24Reuters
  • 与党内の計算:敗北直後の総辞職・総裁(代表)交代は短期的な“ガス抜き”になりますが、解散総選挙のリスクや後継の不在があれば先送りが選ばれます。今回も、政権は外交・経済案件の継続を名目に「当面続投」を選択しました。Reuters

要は、「民意は重い。しかし“法のスイッチ”はまだ押されていない」

というのが現在の立て付けです。

だからこそ、選挙で示された不信と、政権の“継続”の間にギャップが生じるのです。

「選挙結果をないがしろに」に対する反論と応答

  • 反論1:参院選は政権選択選挙ではない
     →その通り、法技術的にはそうです。しかし、民意の警告には意味がある。与党は国会運営で譲歩や政策修正を行い、家計の痛みに対する迅速な対策を示す責任があります。参院で多数を失った以上、野党や無所属との合意形成力こそが“民意への応答”になります。East Asia Forum
  • 反論2:賃上げは広がっている
     →名目賃金の押し上げ自体は事実でも、実質で見れば家計はまだ回復していません。夏季ボーナス期でも実質賃金はマイナスが続いています。Reuters
  • 反論3:景気は持ち直す見通し
     →見通し(BOJ・OECD)と足元の負担感は別物。先行指標が改善しても、家計が“楽になった”と感じるには時間差があります。日本オリンピック委員会OECD

何が政治に“痛み”を伝えるのか

総辞職は“法のスイッチ”が入ったときに起きる出来事。では、今できることは何か。

  1. 政策への即時圧力
     ― 低所得層・子育て世帯への食料品・公共料金の重点減免、現金給付のタイムリーな再設計、所得税・社会保険料の負担調整など。根拠はシンプルで、「実質賃金が戻るまでの橋渡し」が必要だからです。Reutersトレーディングエコノミクス
  2. 国会運営の監視
     ― 参院での多数喪失は法案審議を通じた実質的な「修正権」を有権者に取り返したということ。与野党の修正協議や重要法案の付帯決議に、生活者目線の条項が入るかどうかを見ていきましょう。East Asia Forum
  3. 制度の理解を“武器化”する
     ― 不信任案が衆院で可決されれば、解散か総辞職かの二択になります。制度の作動条件を知ることは、次の一手を考える最低条件です。Prime Minister’s Office of Japan

結論――「法」は動かなくても、「政治」は動かせる

選挙は「年に一度の意見箱」ではありません。

参院選の結果が法的に総辞職を強制しないとしても、

政治的には政権に重い修正義務を課しました。

家計の苦しさは数字にも表れている。

ならば、政府は“続投”の代わりに“即応”を示すべきです。

――生活を軽くするための具体策と、国会での合意形成。

それこそが、選挙で示された民意に対する、最もまっすぐな返答です。


注:本稿は2025年8月28日時点の公開情報をもとに構成しています。主要事実(参院選の結果、政権の続投方針、実質賃金や物価動向)は下記のニュース・公的資料をご参照ください。

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